株式会社りそなホールディングスの取り組みレポート

社会に恩返しがしたい。社員一人ひとりの「感謝」の気持ちがCSRの原点

公的資金注入をきっかけに芽生えたCSRマインド

 2つの大手銀行などが統合して2000年に誕生したこの会社は、これまでに総額3兆1,280億円の公的資金の注入を受けた。経営危機に瀕し、顧客に対して申し訳ないという思いと、将来への不安を抱えていた社員は、この出来事によって「国民の方々に助けられた」と痛感した。
 以来、社員の間には「借りたものは責任を持って返す」という決意とともに、「社会に恩返しをしたい」という気持ちが現れるようになった。会社の経営危機をきっかけに、社員一人ひとりの心に社会的責任が芽生えたのだ。

業界初の「子ども向け金融経済教育」で、次世代にお金の大切さを伝える

 社会にどんな恩返しができるか。そう考えるなか、支店の社員から、「子どもたちに自分たちの持っている金融知識を伝えたい」という声が上がった。
 「次世代への貢献は未来の恩返しにつながる」と実施が決まったものの、予算もなく、準備はすべてボランティア。有志の社員が業務時間外の夜間や休日に集まっては、内容はどうするか、どんな教材やゲームをつくるか、と知恵を絞った。そして2005年8月、東京、大阪、埼玉の3カ所で、大手銀行では初となる「子ども向けマネー教室」が開催された。
 参加した約90名の子どもたちは、銀行内を見学したり、お札を数えたり、1億円の重さを体験したり、ゲームでお金の役割や大切さを学んだり、と大満足。親からは「どう伝えたらいいかわからなかった“お金“のことを教えてもらい、とてもありがたい」と喜ばれた。
 その一方で、社員たちはお金の大切さが子どもたちにはまだ十分に理解されていないことを強く感じた。お金はどうやって得るのか。働くとはどういうことなのか。生活にはどれだけお金が必要なのか。お金があれば幸せなのか。そうした「お金とのつきあい方」をしっかり学び、一人でも多くの子どもが将来自らの力で正しく生きていけるように、との願いから、2年目以降は開催を全国規模に拡大している。
 5年目となる2009年は、194ヵ所で約3,000人の子どもが参加する予定だ。各店舗で準備に奔走する社員は業務との両立に苦慮するが、「自分が得たものを伝え、喜んでもらえる」という達成感は、彼らのモチベーションを大いに掻き立てている。

女性社員の活躍が会社をよみがえらせた!

 「既得権益を持たない人こそ、会社を変えることができる」
 この会社の会長は、経営改革に向けてそう宣言した。当時、「既得権益を持たない人」の代表は、社員の6割を占める女性たち。高い能力を持つにもかかわらず、多くの場合、一般職として決められた業務をこなすことだけが求められていた。
 しかし改めて現場を見てみると、店舗を訪れる多くの顧客が女性だった。社会に目を向ければ、家計を握り、購買を決定するのも女性だ。こうした女性たちのニーズにあわせた金融商品やサービスを提供するべきではないか。それには女性ならではの視点や発想が必要ではないか。そしてこの会社は、「女性に支持されるNo.1銀行になろう」というスローガンのもと、女性社員の能力活用に全力で取り組み始めた。
 働きやすい環境をつくるために、産休育休制度といった出産・育児対策をはじめ、パートタイマーから正社員への社員転換制度など、キャリアアップに対応する人事制度の充実を図った。
 「この5年で社員の意識は完全に変わりました」とCSRグループの女性リーダーが話すとおり、今では多くの女性社員が制度を活用して仕事を続け、存分にその能力を発揮している。
 女性が活躍する会社として、社外から数々の表彰も受けた。しかし何よりも、生き生きと働く女性社員の姿が、窓口を訪れる顧客に「再生した銀行」を印象づけている。

環境省の「エコ・アクション・ポイント」に参加!ポイント発行件数は全国NO.1

 2008年10月、この会社は金融機関で初めて、環境省の推進する「エコ・アクション・ポイント」に参加した。環境に配慮した商品やサービスの購入によってポイントが貯まり、1ポイント=1円相当の商品と交換できる、という仕組みだ。
 この会社では、通帳を発行しない普通預金口座を開設した顧客に、50ポイントを進呈することを決めた。全国の600店舗で「通帳を持たないことがエコにつながるんですよ」と伝え始めると、半年間で約10万人がその主旨に賛同し、通帳のない口座を開設するという成果につながった。また、グリーン電力を利用して開催した今年の株主総会でも、出席者にポイントを配布。こうした取り組みにより、ポイント発行件数は、エコ・アクション・ポイント参加企業の中でもNO.1の実績を誇っている。
 そして、この会社の店舗ロビーには「エコの木」がある。通帳のない口座のほか、公共料金の支払いを窓口ではなくATMで行う伝票レス取引など、環境に優しい「ペーパーレス」のサービスを選んだ顧客が、自分で緑のシールを貼っていくというもの。緑の葉が増え、エコの木が成長していくようすを、店舗を訪れる人も社員も同じように見守ることができる。
 ある支店の社員が自発的に始めた「エコの木」。その小さな取り組みは、現在、全国すべての店舗に広がり、多くの人の環境意識を育んでいる。

地域のために、お客様のために、自分たちがすべきこと

 この会社は「地域密着型」という原点に立ち返り、本業の金融を通じて地域を活性化し、社会に恩返ししようと尽力している。
 お金を預かり貸し出すことに加え、各支店の持つ地域ネットワークを活かして、生産者と小売業を結びつける展示商談会や、顧客の声を企業の商品開発に活かすモニター会を開催するなど、ビジネスチャンスを提供する場も積極的に設けている。同時に、お祭りなどのイベントに店舗ロビーを開放し、ブースを出店するなど、地域と共生するための努力も惜しまない。

 「“この銀行を残してよかった”と思っていただきたい、という気持ちが社員の中にあります。地域経済の“ハブ(中心)”としてやるべきことをひとつずつ実践して、社会に還元したいのです」とCSRグループの担当者は話す。
 公的資金の完済に向けた企業努力は続いている。それを支える社員一人ひとりの取り組みは、この会社のCSRの大きな原動力にもなっている。

有限会社パワーボールからのコメント

 取材のとき、CSRグループの担当者から「助けてもらった」「恩返しがしたい」「役に立ちたい」といった言葉が何度も飛び出した。公的資金注入が、会社の経営陣だけでなく、社員一人ひとりにまでそうした気持ちを抱かせていることに、正直驚いた。以前は、金利も営業時間も手数料も横並びが当然だった業界の風潮。しかしこの会社は、再生を機にこれまでの常識を破り、窓口営業時間の延長、ATM手数料の無料化など、自分たちがすべきことを考え出した。「地域のために」「お客様のために」と本気で考える姿に、CSRの理想を感じた。 

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